六世歌右衛門は戦争末期、著者の先輩今福祝アナウンサーの厚木の実家に疎開した。彼は坊主頭でカーキ色の国防服を着てゲートルを巻き、力仕事をした。十五代目羽左衛門、勘弥、勘三郎、十一代目の団十郎、二代目松緑-名優たちへの挽歌を中心に、脇役や大向うの人々、自らの声色修業など、歌舞伎にまつわるエピソードを名調子で語る好エセッイ。