若くて健康なら、普段の生活で身体の運動のことなど気にもとめない。ところが私たちの世界は、世界と自己をつなぐ身体運動があって初めて形成されたものなのである。身体の自由を失って気づくのもこのことだ。それなのに身体運動は、たんに意志による操作対象のごとくに扱われてきた。本書は、運動学の実証的研究にもとづき、身体を心身二元論から解放し、空間と時間の経験の中に置き直して、身体を動かすことの意味を考える。