九州テレビ放送でディレクターを勤める杉原渓子、二十九歳。そろそろ婚期を過ぎようとする彼女は、ふとした行きちがいで出会った男に、身をまかせてしまう。男には、渓子が理想の男性像として描く、亡兄の面影があった。それきり消息を絶った男に、想いをつのらせる渓子は、ゆくえを捜しはじめるが…。旅情豊かな九州を舞台に、ひとりの女性が抱く幻影を活写。