「ありがとう、ルカ。本当に最高の思い出ができたわ」エミリーは、旅先のヴェローナで出会ったルカに、そう告げた。明日はロンドンに発つ。そして彼に会うことはもう二度とない。ルカとは野外オペラで知り合い、美しい庭園でランチを楽しみ、そしてホテルのスイートで至福の午後を過ごした…。投資会社を経営する裕福な彼だからできることかもしれないけれど、ようやく旅費を貯めてニュージーランドから来たエミリーには、想像もつかない贅沢なひとときだった。でもこれは何の約束もない、さよならで終わる旅の出会いと別れ。どんな期待もしてはいけない。だがルカが残した情熱の刻印は彼女の体から消えることはなかった。