深川は門前仲町の芸者置屋「紀之屋」の玉吉は、何者かに襲われ息絶えようとする浪人から、この金を娘に、と託される。届けに行った先で出会ったのは、たった十歳で天涯孤独になってしまった娘、ちづ。玉吉はかつて御家人だった頃に失った自分の娘とちづを重ね、浪人が殺された理由を調べ始める。その裏には、奉行所も頭を悩ませるある事件がからんでいるのだった…。苛烈な過去を持つがゆえに心優しき幇間が江戸を奔る、シリーズ第二弾。書き下ろし長編時代小説。