太宰が最も尊敬し、芥川、川端が恐れた作家
豊島与志雄の全貌が明らかになる代表作が
現代仮名遣いによって甦る!
芥川龍之介に
「山間の湖の如く静かなのは、豊島与志雄氏の作品である」
と言われた豊島は、「忘れられた作家」と呼ぶには
あまりにも大きな存在である。
太宰治、坂口安吾、田中英光らは豊島を深く尊敬した。
太宰は「先生も、私と同様に、だらしがない。
そうして、日本で、いちばんの教養人だ」と評し、
川端康成は、「終始孤高の高士であるが、
そのひとりの世界では魔につかれて、
なにをしているかわからぬ怪物である」と言った。
本書では、初期の作品から戦後のものまで収録しているが、
どの時期の作品も、深いメランコリーの影が射している。
そして終始一貫して理知的であった。
怜悧さ故の虚無感に包まれながら完璧への希望をも
持ち続けた隠れた名作をお届けします。