新米目付の風祭百太郎に縁談が持ち上がった。相手の雪江を前に浮かれる百太郎だが、雪江の兄・与一郎が刺客に狙われる場面に遭遇し、図らずも危機を救うことに。その頃、筑波山の山奥で、幼い兄妹が陣屋を脱出していた。猿のごとく樹上へ飛び上がり、忍びの技をつぎつぎに繰り出すふたりは、その足で江戸へ--。秋深まる浅草、今日も賑わう髪結「つばめ床」。悲しき過去を背負う兄妹も、人の情けにふれて……。書き下ろし長篇。