水道民営化とは、地域窮乏化政策だ!
欧州の水道再公営化運動が生んだ、新たな民主主義から学び、日本の水道を、グローバル資本から守る。
1980年代以降、民営化路線を歩んできた欧州の水道事業。
しかし杜撰な管理や財務の問題にスポットがあたり、再び、水道を公営化に戻そうという大きな流れが市民運動を起点に巻き起こっている。
昨今、注目されている欧州の左派ポピュリズムのうねりの中核は、実は「水道の再公営化」を求める権利運動だったのだ。
水は、人々の共有財・公共財<コモン>である。
資本が利潤をあげるための対象として水を扱えば、たちまちその地域は窮乏化していく。
民営化で疲弊した欧州の人々の怒りが地方自治体を動かし、「ミュニシパリズム」や「フィアレス・シティ(恐れぬ自治体)」など、新しい民主主義の形を作り出しているのだ。
その成果である、水道事業の再公営化はなんと178件。
水を再び自分たちのものへと取り戻す欧州の運動から日本が学び、各自治体において民営化をストップさせるにはどうすればいいのか。
日本人でありながら、欧州・民主主義の最前線に立つ著者が、日本再生のためのカギを明かす。
【目次】
1章 水道民営化という日本の危機
2章 水メジャーの本拠地・パリの水道再公営化
3章 資本に対抗するための「公公連携」
4章 新自由主義国・イギリスの大転換
5章 再公営化の起爆剤は市民運動
6章 水から生まれた地域政党「バルセロナ・イン・コモン」
7章 ミュニシパリズムと「恐れぬ自治体」
8章 日本の地殻変動
【著者略歴】
岸本 聡子(きしもと さとこ)
1974年、東京都生まれ。シンクタンク研究員。アムステルダムを本拠地とする、政策シンクタンクNGO「トランスナショナル研究所」に二〇〇三年より所属。
新自由主義や市場原理主義に対抗する公共政策、水道政策のリサーチおよび世界中の市民運動と自治体をつなぐコーディネイトを行う。共著に『安易な民営化のつけはどこに』など。