高齢化の現代を生きぬくために 現代では多くの先進国が高齢化社会へ向かって進んでいます。日本でも、働き盛りの人が介護を必要とする親御さんをかかえて苦労したり、老々介護となったり、また一人暮らしの高齢者の健康の問題や、それらを背負ってゆく若い世代の負担など、解決すべき多くの問題をかかえています。それはまた人類の未来の大きな課題にもつながっています。
人は生まれてきたら、国籍や民族、地位や財産にかかわらず、平等にいつかは死の時を迎えます。ではタオイストは、生死についてどのような考えをするのでしょう。
『荘子』では、「死ぬことは、旅人がこの世での旅を終えて故郷に帰るようなものだ、嘆き悲しむようなことではない」と教えています。また、老化については「天が楽をさせるために歳をとらせるのだ」と言うのです。なんて大らかで明るい考え方でしょう。 そして、私たちは日ごろから自然に沿った生き方を心がけ、人間だけの利益を追求したり、限りない欲をふくらませたりする生き方をやめて、この地球上、そして宇宙全体にあるすべての存在とともに楽しく調和して生かされてゆきなさい、と教えているのです。
この本にご紹介した『老子』『荘子』の言葉については、現代の言葉に言い換えたために深い哲学を表現できていない面もあるかと思います。ですが本書では、専門家の先生がたや先学の大先輩からおしかりを受けることも覚悟の上で、思い切ってわかりやすくいたしました。また言葉の理解を深めるために、私のほうで解説を付けさせていただきました。
このTAOの本を世界の一人でも多くの方にお読みいただけますように、30の言葉には英語と中国語の訳をいれました。また、『老子』『荘子』の言葉には原文と現代語訳を併記しました。翻訳につきましては、英語は玉置百合子様に、中国語は李均洋教授のご指導のもと徐萌様に、それぞれ丁寧に心をこめて訳していただき、こうしてすばらしい本が完成いたしましたことを、ここに心から感謝申し上げます。
この本を読んでいただいた今、皆様の心に生きる元気や、ほっとした解放感、そして無為自然の豊かさを少しでも感じていただけていたら何よりに思います。また人生の晩年は豊かで楽しいものであり、死も怖がるものではない、と感じていただければ幸いです。
皆様がより輝いて楽しく豊かに、生涯現役に過ごされますよう心よりお祈りいたします。